子どもへの体罰はしつけになる? 明らかになった3つの悪影響
子どもへの体罰はしつけになる? 明らかになった3つの悪影響
小中学生を対象としたある調査では、“過去に体罰を受けた経験のある子どもはイジメの加害者になりやすい”という結果が出ました。この調査は、約400名の子どもをイジメ加害者群とイジメ無関係群に分け、体罰を受けた経験の有無を問うというものです。「よく又は時々体罰を受けた」と回答した割合において、イジメ無関係群では30%程度なのに対し、イジメ加害者群では55~60%と2倍近くの差が出ました。このことから、体罰を受けることで攻撃性が強くなり、イジメや暴力的な行動をとりやすくなるといえます。
体罰を受けた子どもの心理状態は不安定になる
体罰を受けることによって、コミュニケーションを取ることに消極的になったり、集団行動が苦手になったりすることも分かってきています。特に、乳幼児期に体罰を受けた場合にこのような影響が大きく現れるといわれています。乳幼児期は、周りの大人との温かい関わりをもつことで信頼関係を築いていく大切な時期です。体罰を受けることで心理的に不安定な状態になり、周りとの信頼関係の構築が妨げられれば、安定した心を育むことは非常に難しいといえます。
体罰を受けた子どもの脳に委縮・変形がみられる
子どもが厳しい体罰を受け続けると、脳の重要な部位に萎縮や変形がみられ、心身の成長に望ましくない影響が及ぶことが分かっています。ある研究では、体罰を受けた子どもの脳の前頭前野が19.1%萎縮し、聴覚野が変形していたことが明らかになりました。前頭前野は社会生活を行う上でとても重要な役割を持ち、聴覚野は声や音を認識するために必要な部位です。体罰は子どもの身体に直接的なダメージを与えるだけでなく、脳をも確実に傷つけてしまいます。
まとめ
日本では、体罰をしつけの一環として肯定する考え方がまだまだ根強く残っていますが、海外では53ヶ国で体罰の完全禁止が法律で定められています。また、今回ご紹介した通り体罰が子どもに与える悪影響は次々に明らかにされてきていますが、反対に体罰によるはっきりとした良い影響は一つも解明されていないのです。
日々懸命に子育てをしている中で、どうしても感情的な言葉が出てしまったり、時には力で子どもを制したくなったりするシーンもあるかもしれません。しかし、力で子どもの行動を一時的に修正することはできても、根本的な教育にはならないという認識を改めて持つ必要があると考えます。